
Inspiration LA 2025
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場所: カリフォルニア州パサディナ(Pasadena, CA)
概要:「Inspiration LA」は、アメリカン・ビンテージ・カルチャーを深く掘り下げ、体感するための祭典です。このイベントは、田中凛太郎氏が手掛けたもので、彼自身がジャズ、ロック、ブルースなどのアメリカ音楽に影響を受け、そのファッション文化に魅了されたことから始まりました。28歳で日本を離れ、サンクレメントに移住してアメリカン・ヴィンテージ文化を探求した田中氏は、2010年に初の「Inspiration」イベントを開催し、ヴィンテージ文化を祝う特別な場として成長させました。
INSPIRATION Vol.17 [April 2025] : KISS ME?
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昨年11月、東京でインスピレーションが初めて開催された日、誰も予想していなかった“出来事”が起こった。
LAでの開催では、イベントスタッフ用に作られたTシャツが田中凛太郎さんのブースで静かに並び、私たちは毎回、それを手に入れるのを密かな儀式のように楽しみにしていた。
だから東京でも、当然のようにそれを買うつもりでいた。
オープン前、スタッフとして親しくなった方と「今日、買えますよね」なんて話していたし、田中さんにも「何時頃から販売ですか?」と聞いて、すでに答えももらっていた。
「じゃあ、そろそろ行こうか」と、会場の熱気に背中を押されながらブースに向かうと、
出迎えたのはTシャツではなく、予想外の一言だった。
「実は……信じられないのですが、開始5分で完売してしまって……」
え?と声を出す暇もなく、思考がふわりと浮かび上がる。
LAではあり得なかった光景。でも、東京なら、と思った。
だって、事前に「もし売ってたら買ってきて」と頼まれていたくらいなのだから。
驚きの中で、田中さんに「買えなくて残念ですけど、よく分かります」と微笑んでその場を離れた。
ちょっとした敗北。でも、なんだか誇らしかった。
——そして、数ヶ月後のLA。
再び田中さんのブースを訪れた私たちは、あの日の“事件”を冗談交じりに話しながら、少し大胆なお願いをしてみた。
「日本には、このTシャツを欲しがっている人がたくさんいるんです。もしよかったら、販売させてもらえませんか?」
前置きも配慮も吹き飛ばした直球の提案に、田中さんは少しも眉をひそめることなく、むしろ晴れやかな笑顔で、
「どうぞどうぞ、それは嬉しいね」と言ってくれた。
それだけでも十分すぎるのに、さらりとサインを入れてくれた。
さらに、おまけまで添えて。「あれもこれも、持っていって」と言わんばかりに。
田中さんのサインの最後には、必ずニコちゃんマークがいる。
^᎑^