Our Stories

“The future is already here — it’s just not evenly distributed.”
— William Gibson

未来はすでにここにある — ただ、それが均等に分配されていないだけだ。
— ウィリアム・ギブソン

はじめに

Ryoの何気ない一言が、私の人生の軌道を静かに、しかし大きく変えた。

「それなら、ジーンズを作ろうよ。」

あのときRyoがそう言わなければ、そして私がほとんど反射的に「うん、そうしましょう」と応えなければ、大江洋服店はこの世に生まれていなかっただろう。

なぜジーンズを作りはじめたのか。

幾度となく問われてきたその問いに、私はいつもうまく答えられなかった。時には、わざと曖昧に笑ってごまかしていたような気もする。

それは、私たちが歩んできた道のりが、あまりに風変わりで、あまりに個人的で、言葉にすればするほどその本質から遠ざかってしまう気がしていたから。

いや、正直に言えば、それを語ること自体が少し億劫だったのだ。

けれど今、ふと筆を執ろうと思えたのは、もしかしたら、あのとき静かに降りかかった呪いのようなものが、ようやく解けた証なのかもしれない。

これは、一組の夫婦がある日ふとしたきっかけでジーンズを作りはじめ、それがやがて、誰かの日々に寄り添う「物語」になっていった、その長くて、静かで、愛おしい道のりの記録である。

- Text / Hiroko Oe

Chapter 1 ジーンズ作ってるんです

 

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(このつづきは、また今度。) 

    • ボクの最強のロボット
    • スポンジ
    • 最弱の素人
    • 最強の素人
Chapter 2 暗黒の時代
Chapter 3 新時代
Chapter 4 大江洋服店